sumanai’s blog

申し訳ない想いを寄せて

「焼肉ドラゴン」

この映画、もともと演劇界で評価が高かったこともあり前評判も上場だったんだけど。謎采配のおかげで地元・岩手では公開が大きく遅れることとなり、封切り日に青森くんだりまで行って見てきた。

 

昭和45年頃、万博開催に沸く大阪の近郊都市の「路地」で焼肉屋を営む在日韓国人一家の物語なんだけど。一言にまとめるとコレ、「万引き家族」と同じ路線じゃん。「万引き家族」がカンヌで大賞取ったら、ネットの声が大きい人たちがギャーギャー喚いてたじゃん。きっと「焼肉ドラゴン」もそうなると思うんだ。正直な所この手の映画は試金石、「万引き家族」や「焼肉ドラゴン」をけなす人間とのお付き合いは8割引に留めておきたい。

 

序盤のシーンで主人公たちが住む街がトタン屋根のボロ家ばかりで驚く。

「これ、終戦直後の闇市が戦後25年経っても残ったパターンじゃん!」
→トタン屋根のバラック小屋でできた「路地」がとてもリアル、鑑賞後、老母にパンフの「路地」の写真見せたら。
「昔(=昭和25年頃)の櫻山神社の門前界隈、こんなだった。」
と懐かしがってた。今は盛岡じゃじゃ麺の名店「白龍」をはじめ個性的な飲食店が並ぶ櫻山神社の門前界隈、元々は終戦直後に大陸から引き揚げてきた人たちが始めた闇市だったんだそうだ。

 

冒頭、昭和45年頃の「路地」を忠実に再現したセットを歩く焼肉屋の中学生の息子の制服がブレザーで。「あの年代なら詰め襟だろ?」と疑問に思ったんだけど、ストーリーが進むにつれて息子が通う学校が私立中学の坊ちゃん校という事で納得。しかも彼は学校でチョーセン帰れとかキムチとか言われていじめられていて、先日紹介した「被差別のグルメ」で「ソウルフードとは差別される食べ物である」と語られていたとおり、彼のブレザーには焼肉とキムチの臭いが染み着いていて、否応なしに在日であることから逃れられなくなってたんだべな。いじめが激しさをきわめ、遂には言葉を発することもできなくなっていったのに。父親はそれでも学校に行かせようとするのが見ていて辛かった。もはや故国に帰れない父親にとっては、今おかれてる場所しか居場所がなく必死に働いてきた父親には、全く理解できないトコがあったんだろう。

 

進学問題といえば、大泉洋扮する焼肉屋の次女の夫もなかなかアレで。「路地」には珍しく大卒なのにそれを活かした就職ができず、仕事が長続きしないダメ人間を好演。ダメ人間の役がやたらハマる大泉洋だけど、本作観た次の日にまた「恋は雨上がりのように」観たら同じ人間とは思えないくらい役の演じ分けがハッキリしてて今更ながらスゴいなと実感した。

 

しつこいけど、話の流れが「万引き家族」と似てて。やがて居場所を失った家族それぞれの選択がそれぞれ違っていていろいろ考えさせられた。

 

ということで、岩手以外の県南地方の方は観て下さい!

 

すまない。