上原善広「被差別のグルメ」(新潮新書)
君はイナゴの佃煮を食べたことがあるか?
オレがイナゴの佃煮を初めて食べたのは5年前、軽井沢の蕎麦屋のサイドメニューを興味本位で食べたんだけどコリコリこりして美味かった。長野県は内陸なので昔は魚が流通せず、かつ当時は「四つ足」動物を食べることはタブーとされたため、タンパク質を摂取するべく昆虫食の文化があるんだそうだ。
で、こんな話があった。
そんな長野の人が明治期に北海道に移植して。それでも昆虫食文化を親子代々受け継いで昭和になった頃。息子のお弁当にイナゴの佃煮を入れたら、お昼時に教室は大パニック。
「みろよコイツ、虫くってる!」
このエピソード、本書で簡潔に言い当ててる。
本当の「ソウルフード」とは、簡単にいえば、人から「差別される料理」のことである。
本書、被差別部落・アイヌ・北方少数民族・沖縄・在日に伝わる美味しい料理がいっぱい紹介されてるんだけど。その料理はただ美味しいだけではなく「差別されるべきエピソード」も含んでいる。あまりに「ふつうの」人たちからは思いもしない食材を思いもしない調理をしてて、でも中には「ふつうの」人たちにも受け入れられる料理があって。ホルモン焼きとか、アブラカスとか、あと今では北海道名物の三平汁もルーツはアイヌ料理だったらしい。なるほど。ちょうど、いま「ゴールデンカムイ」のアニメ版観てて。そこに出てくるアイヌ料理がおいしそうだったトコにこれ読んで、とても勉強になった。
それにしても著者の上原善広氏、この方のノンフィクション作家力がすげぇ。今までノーマークだったのが悔やまれる。他の作品もチェックすねばなんねな。
すまない。